通信社の大阪本社に勤務する恩田和志(椎名桔平)は、気骨あふれる記事を発信してきた社会部記者。一方で組織からはみだしがちな存在で、今も大学の補助金の不正プールを暴く取材で協力者の裏切りにあい、懲罰委員会にかけられている身分だった。上司の本 郷真一(伊武雅刀)からも、3カ月以内に結果を出すよう釘を刺されている。
そんなとき、恩田の記事を読んだという弁護士・櫻木希久子(財前直見)が訪ねてくる。希久子は、3年前に発生した少女誘拐殺人事件の被告・山崎哲也(長谷川朝晴)の新たな弁護人で、山崎は無実だと主張。京都府警が失態を隠すために、犯人逮捕を急いだ末の冤罪だと断言する。
その事件は、外食チェーンの会社社長・春薗秀紀(丸山智己)の娘で当時10歳だった乙女が誘拐され、身代金6000万円が奪われた挙句、2カ月後に遺体となって見つかったという惨いもので、春薗家に出入りするディーラー・山崎が逮捕起訴され、すでに一審、二審で死刑判決を受けていた。当時、京都支社の遊軍記者だった恩田も取材に当たり、その後、山崎の心の闇を探るべく取材を重ねて記事を書いたものの、正直、動機すらつかめなかったという苦い思い出があった。そんな恩田に、希久子は山崎は府警に自白を強要されたのだといい、無実を立証するために協力してほしいと頼みこむ。
もし希久子の主張が真実だとしたら、大スクープだ…! 京都支社にいる後輩・佐々木太一(塚本高史)の協力のもと事件の洗い直しをはじめた恩田は、身代金受け渡し現場で山崎を目撃したと証言した小料理屋の女将・小鳥遊純枝(山下容莉枝)に関する不審な情報をつかむ。事件の直後、純枝の息子が仲間と共に大麻所持で逮捕されたにもかかわらず、ひとりだけ不起訴になったという。純枝は恩田の直撃に対し、山崎の顔をはっきり見たわけではないことを渋々、明かす。
恩田は、被害者の母・加奈子(浅見れいな)にも話を聞く。3年間そのままにしてあるという乙女の部屋を見せてもらった恩田は、ぬいぐるみに乙女の髪の毛が付着していることに気がつく。実は、山崎の逮捕の決め手となったのは、彼の車から見つかった乙女の毛髪だった。加奈子は事件の1週間前、山崎の勤め先である外車販売店にそのぬいぐるみを忘れ、届けてもらったことがあると恩田に打ち明ける。ぬいぐるみの件については加奈子も山崎も捜査一課の刑事・村上清孝(小林稔侍)に話したというが、調書にはまったくその記述はない。もしかしたら、逮捕を決めた唯一の物証――乙女の毛髪は事件1週間前のものではなかったのか…!?
村上は恩田が10年前から懇意にしてきた叩き上げの刑事で、現在、病に倒れ入院中だった。病床の村上は恩田の追及に対し、自ら逮捕の決め手となった証拠をねつ造したと告白する…! その後、恩田と希久子は、別の連続少女殺害事件で死刑が確定している栗原稔(甲本雅裕)と山崎を結ぶ“見えない糸”に気がついて…!?